長さんの名刺

長さんに話を聞かせてもらったことは書きましたが、もう一つ書いておきたいことがあります。


それは当日会場に着いた際に長さんから名刺をいただいたのです。

長さんの名刺はシンプルで「南三陸町漁業再生支援協会」の理事長であること、養殖業を営んでいることなど書かれていました。その中でも私の目を引いたのは彼の住所地でした。


そこには(新)と(旧)の両方の住所が書かれていたのです。
そう被災した後と被災する前の住所が…。


私はそれを見た瞬間思わず「大変だったのですね」と言いたくなりました。
しかし、実際には言葉にはしませんでした。なんだかこの言葉があまりにも軽々しい発言になってしまうのではないかと感じてしまったからです。


頑張っている人に「がんばれ」というのは失礼だ、ということもたまに耳にします。それと似たような物かも知れません。


しかし、言葉にしてはいけないのでしょうか。
苦しみを共有することは難しいのでしょうか。


わかりません。


果たして「言葉にする」のが正しいのか、正しくないのか、私にはわかりませんし、答えなんてない気がします。正解が無い設問です。
つまり、自分がベターだと思う行動をするしかないのでしょう。

もう一度、同じ場面になった時、私は言葉を発することが出来るのでしょうか。
それとも黙ってしまうのでしょうか。